パソコミ誌『あ』の電脳版

猿若句会直近の[例会特選句集]、連句・友多加座の[最新巻]、私家版辞典[酷誤呆典]、掌エッセイ[信想究迷]などなど

猿若句会2020年10月例句会(10月17月日)特選句集

 

◎=特選  ○=秀作  △=佳作

◎ 鮭番屋鱗の光るゴム長靴         川上登美枝

◎ 苅田道転がってゐる猫車         高橋 均

◎ 久し振り慶事の靴を磨きおり     古明地昭雄

◎ リハビリの父の掌に鳴る鬼胡桃         花柳小春

◎ なかなに去なぬ苅田の夕童子         丸本 武

◎ 銀座線べたら市より帰る人         宮島久代

◎ 横浜の港秋晴れ赤い靴         長谷川英夫

◎ 流れゆく胡桃どこまでも海までも         大橋一火

○ 柿干して過疎の古里はなやげる         伊藤 理

○ 過疎の村苅田に騒ぐ群雀         柴田弘

○ 二人乗り乳母車来る花野かな         中村呆信

○ 山胡桃森生物の糧となり         児玉竹子

○ 口と手は達者な証くるみ割る         内野和也

△ 故郷を干柿仰ぎ歩みけり         原 健一

△ 頑なに割れぬ胡桃を放り投げ         佐竹茂市郎

 

「ひとこと」

巻頭句の鑑賞で焦点になったのは「番屋」の解釈でした。誰もが一応は様々な媒体を通じて知ったそれなりのイメージは持っていました。しかし、どうも変です。結局は作句著が明かされたところで明らかになったのは微妙にずれていました。

「番屋とは禁漁の期間中(特に深夜)、鮭の盗漁を防ぐために見回る基点」

句会の出席者は国語辞典と歳時記が必携なのだが、意外な言葉が不備であったりする。どうやら「鮭番屋」は『デジタル辞泉』の「鮭」の副題に「鮭の番屋」とあったのみの模様。今回は出句者の出身地ということで実情までも聞けて、番外の勉強になりました。ようやく「番屋」に対するイメージが統一出来て、この句の本格的な鑑賞が再開されました。

 ◆なお、知の木々舎のブログhttp://blog.so-net.ne.jp/chinokigi/ の月前半期(1~14日)には「猿若句会秀句選」が掲載されています。