パソコミ誌『あ』の電脳版

猿若句会直近の[例会特選句集]、連句・友多加座の[最新巻]、私家版辞典[酷誤呆典]、掌エッセイ[信想究迷]などなど

猿若句会特選句集

 

猿若句会2020年11月例句会(11月21日)特選句集

 

◎=特選  ○=秀作  △=佳作

◎ 丸 窓は「悟りの窓」や床もみじ   丸本 武

◎ 社掃く禰宜日課や神の留守          内野和也

◎ 手水舎に鳩が群れてる神の留守     佐竹茂市郎

◎ 晴れゐても影の淡かり冬ざくら         伊藤 理

◎ 家族分干し靴並べ小春かな         児玉竹子

◎ 風邪ひいて腹もこわして正露丸          高橋 均

◎ 明日こそ一日延ばし霜囲い         宮島久代

○ 良き縁絵馬に託せり神の留守         長谷川英夫

○ 着脹れて背を丸めたる老いの冬         柴田弘

○ 神殿の奥薄暗し神の留守         川上登美枝

○ 出雲路は渋滞なるや神の留守         花柳小春

○ 消し難きことも消したし神の留守         三宅 哲

○ 帰り花見て顧り見る満つる日々         古明地昭雄

○ 下山道薄暮の丘に枯れ薄         原 健一

○ 居酒屋の論敵逐電神の留守         中村呆信

○ 海に浮く朱丹の鳥居神の留守         中村克久

 

「ひとこと」

今回の巻頭を飾った丸本武さんは、実は大変な快挙を逃ししいことをしました。猿若句会の例会では出席者は五句を出句(欠席者は三句を投句)し、会員相互間で互選をします。当日の武さんの出句を見てみましょう。まず兼題「神の留守」=[神留守や嘘をつくろふための嘘]、次が当季雑詠①「空也忌」=[空也忌や吐けば句になれ我が言葉]、同②たまたま「神の留守」を自ら選び出句=[幾度目の禁酒の誓ひ神の留守]、当日の席題①は「泥鰌掘る」にして=[悪餓鬼で泥鰌掘らせば名人で]]、同席題②「丸」が巻頭句の=「丸窓は「悟りの窓」や床もみじ]だったわけです。そして選句の結果が順に特選・特選・秀作・特選・特選になりました。これまで会亭の記憶では出句五句全句が特選に選らばれたことは無いと記憶しております。まわりくどい書き方をしましたが、仮に《最高受賞点》とでも呼べばこれを逃がしたわけです。

猿若句会2020年10月例句会(10月17月日)特選句集

 

◎=特選  ○=秀作  △=佳作

◎ 鮭番屋鱗の光るゴム長靴         川上登美枝

◎ 苅田道転がってゐる猫車         高橋 均

◎ 久し振り慶事の靴を磨きおり     古明地昭雄

◎ リハビリの父の掌に鳴る鬼胡桃         花柳小春

◎ なかなに去なぬ苅田の夕童子         丸本 武

◎ 銀座線べたら市より帰る人         宮島久代

◎ 横浜の港秋晴れ赤い靴         長谷川英夫

◎ 流れゆく胡桃どこまでも海までも         大橋一火

○ 柿干して過疎の古里はなやげる         伊藤 理

○ 過疎の村苅田に騒ぐ群雀         柴田弘

○ 二人乗り乳母車来る花野かな         中村呆信

○ 山胡桃森生物の糧となり         児玉竹子

○ 口と手は達者な証くるみ割る         内野和也

△ 故郷を干柿仰ぎ歩みけり         原 健一

△ 頑なに割れぬ胡桃を放り投げ         佐竹茂市郎

 

「ひとこと」

巻頭句の鑑賞で焦点になったのは「番屋」の解釈でした。誰もが一応は様々な媒体を通じて知ったそれなりのイメージは持っていました。しかし、どうも変です。結局は作句著が明かされたところで明らかになったのは微妙にずれていました。

「番屋とは禁漁の期間中(特に深夜)、鮭の盗漁を防ぐために見回る基点」

句会の出席者は国語辞典と歳時記が必携なのだが、意外な言葉が不備であったりする。どうやら「鮭番屋」は『デジタル辞泉』の「鮭」の副題に「鮭の番屋」とあったのみの模様。今回は出句者の出身地ということで実情までも聞けて、番外の勉強になりました。ようやく「番屋」に対するイメージが統一出来て、この句の本格的な鑑賞が再開されました。

 ◆なお、知の木々舎のブログhttp://blog.so-net.ne.jp/chinokigi/ の月前半期(1~14日)には「猿若句会秀句選」が掲載されています。

 

 

猿若句会2020年10月例句会(10月17月日)特選句集

 

◎=特選  ○=秀作  △=佳作

◎ 鮭番屋鱗の光るゴム長靴         川上登美枝

◎ 苅田道転がってゐる猫車         高橋 均

◎ 久し振り慶事の靴を磨きおり     古明地昭雄

◎ リハビリの父の掌に鳴る鬼胡桃         花柳小春

◎ なかなに去なぬ苅田の夕童子         丸本 武

◎ 銀座線べたら市より帰る人         宮島久代

◎ 横浜の港秋晴れ赤い靴         長谷川英夫

◎ 流れゆく胡桃どこまでも海までも         大橋一火

○ 柿干して過疎の古里はなやげる         伊藤 理

○ 過疎の村苅田に騒ぐ群雀         柴田弘

○ 二人乗り乳母車来る花野かな         中村呆信

○ 山胡桃森生物の糧となり         児玉竹子

○ 口と手は達者な証くるみ割る         内野和也

△ 故郷を干柿仰ぎ歩みけり         原 健一

△ 頑なに割れぬ胡桃を放り投げ         佐竹茂市郎

 

「ひとこと」

巻頭句の鑑賞で焦点になったのは「番屋」の解釈でした。誰もが一応は様々な媒体を通じて知ったそれなりのイメージは持っていました。しかし、どうも変です。結局は作句著が明かされたところで明らかになったのは微妙にずれていました。

「番屋とは禁漁の期間中(特に深夜)、鮭の盗漁を防ぐために見回る基点」

句会の出席者は国語辞典と歳時記が必携なのだが、意外な言葉が不備であったりする。どうやら「鮭番屋」は『デジタル辞泉』の「鮭」の副題に「鮭の番屋」とあったのみの模様。今回は出句者の出身地ということで実情までも聞けて、番外の勉強になりました。ようやく「番屋」に対するイメージが統一出来て、この句の本格的な鑑賞が再開されました。

 ◆なお、知の木々舎のブログhttp://blog.so-net.ne.jp/chinokigi/ の月前半期(1~14日)には「猿若句会秀句選」が掲載されています。

 

 

8月特選句集

猿若句会2020年8月例句会(8月15日)特選句集

 

◎=特選  ○=秀作  △=佳作

◎ 桐一葉虫のかばねを覆いけり         柴田弘

◎ 夕餉にはゴーヤチャンプル敗戦忌         高橋 均

◎ 迎へ火を焚く門虚し老の街     古明地昭雄

◎ 終戦日もうこの道にもどらぬぞ         川上登美枝

◎ 逆の峰投句箱置く行者宿         中村克久

◎ 十五日何と云われょと敗戦日         中村呆信

◎ 熊蝉が箱根の関を超え来たり         丸本 武

◎ ただ祈ることが供養の終戦日          児玉竹子

○ 原爆忌まだまだ足りぬ千羽鶴         花柳小春

○ 宇宙ゴミ漂う所天の川         宮地久代

○ 敗戦日雑音多き借りラジオ         大橋一火

○ 日は西に沈思黙考生身魂         内野和也

○ 靖国に同期の顔あり終戦日         佐竹茂市郎

 

「ひとこと」今月分もですが遅れてしまいました、申し訳ありません。今月も巻頭句は弘道・次席も均と同氏が並びました。共に句意は明らかです。しかし、特選に選ばれるほどの作品でしょうか。厳しいことをかきます。共にせいぜい秀いでしょうか。当会は全て会員同士の選句で決めています。ですから恥を隠くさず云えば、自分たち会員の選句力の不足を暴露してるみたいのものですが。

話変わって、「俳句をうまくなるにはどうしたらいいですか」と、よく聞かれれます。「選句力をつけることです。そのためには他人の句を沢山読むことです。」また「自分の好きな作家を見つけることです。」つまり、自省をこめて猿若句会の会員へのメッセージです。

 ◆なお、知の木々舎のブログhttp://blog.so-net.ne.jp/chinokigi/ の月前半期(1~14日)には「猿若句会秀句選」が、同じ事由で復活再掲載を始めています。

猿若句会2020年7月例句会(7月18日)特選句集

 

猿若句会2020年7月例句会(7月18日)特選句集

 

◎=特選  ○=秀作  △=佳作

◎ 階を蟻が追い越す老の足         柴田弘

◎ 電線の影さへえ拾ひゆく暑さ      高橋 均

◎ 霧雨や蜘蛛の巣白し庭の朝     原 健一

◎ 献灯の仄と揺れをり宵の宮         児玉竹子

◎ 見ても見ぬ振りして見たる裸体かな         丸本 武

◎ 一体の仏像に礼風死す日         宮島久代

◎ 前掛を外し迎へる神輿かな         川上登美枝

◎ 白絣高下駄軽し石塀小路         古明地昭雄

○ 一雨に土にほひたつ簾かな         伊藤 理

○ 夏祭年に一度のいい男         花柳小春

○ びしょ濡れの笑顔眩しき祭の子         中村克久

○ コロナ禍のはよ行き過ぎよかたつむり         長谷川英夫

○ るんるんと祭姿の父子連れ         大橋一火

○ また一つ年を取ったり祭笛     佐竹茂市郎

○ 生き方の理想は孑孑浮き沈み         中村呆信

 

「ひとこと」今月分ですが大幅に遅れてしまいました、申し訳ありません。まず今月の巻頭句の句意から書こうとしたのですが、うまくいきません。皆様はどう読んで選句出来たのでしょうか? 階(のどの部分で)を,蟻が追い越したのは(仲間の蟻、いや追い越い越されたのは私でしょうね)(とすると、老いの足は私の足=私が老いを感じた)半ば強引に句意を探ると、これで良いでしょうかね。何とも力不足どうにもなりません。時間も無いので今月に限ってご勘弁ください。

 

 ◆なお、知の木々舎のブログhttp://blog.so-net.ne.jp/chinokigi/ の月前半期(1~14日)には「猿若句会秀句選」も、同じ事由で復活再掲載を始めています。

います。

 

 

 

猿若句会2020年6月例句会特選句集

(2020年6月20日

◎=特選  ○=秀作  △=佳作

◎  上水に刻の流れや桜桃忌      中村克久

◎  焼き鯖に若狭小浜の風を嗅ぐ      花柳小春

◎  女郎蜘蛛有明月を捕えおり      古明地昭雄

◎  短夜や夢と現が入り乱れ      中村呆信

◎  明易や友の妻より来し電話      丸本 武

〇  相席は皺のある人生ビール      高橋 均

〇  短夜や夢は旅立つところまで      川上登美枝

〇  集落の人無き畑に姫女苑    原 健一

〇  明け易し大きく響く寺の鐘      宮島久代

〇  立葵丈比べする母児かな      柴田弘

〇  青春は悩みばかりや桜桃忌      佐竹茂市郎

○  太陽の高さを仰ぐ夏至夕べ      伊藤 理

○  小鳥なく多摩の川原や梅雨の空      長谷川英夫

△  墓前にはタバコ一本桜桃忌    児玉竹子

△  桜桃忌水と戯る童かな      内野和也

△  堤防に下駄捨ててある桜桃忌      大橋一火

 

「ひとこと」コロナの緊急事態宣言が出て例会も休会していたためこの句集も同様休載していました。やっと復活再開です。巻頭句、兼題句「桜桃忌」のなかの一句でした。「桜桃忌」の出句が24句もありました。当然、兼題句だけではそれほど集まりません。何人かが当季雑詠句も兼題句で挑戦してきたのでしょう。特徴ある季語だからと、気軽に考えたのでしょう。しかし、その殆どが失敗しています。知るべくもない太宰治と、禅林寺での桜桃忌に参加していなくても知識として知っていたことで気軽に考えたのでしょう。私も出句のため作句しました。特徴的な季語だと思ってはいましたが、逆にとらえどころの薄い手強い相手でした。それと、季語を下五での作句が24句中21句もあったことです。「桜桃忌」と下五と決めることで、上五と中七の措辞と取り合わすべき一章が前記と同じ事由で限定され過ぎて選べなったのではないでしょうか。

 ◆なお、知の木々舎のブログhttp://blog.so-net.ne.jp/chinokigi/ の月前半期(1~14日)には「猿若句会秀句選」も、同じ事由で復活再掲載を始めています。

います。